新総合物流施策大綱が公表〜さらなる物流DXの推進へ〜

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こんにちは。Cariot(キャリオット)ブログ編集部です。

2021年度〜2025年度の物流施策指針となる「総合物流施策大綱」が、2021年6月15日に閣議決定されました。
同大綱では、新型コロナウイルス感染症拡大により物流が直面する課題が先鋭化・鮮明化していることを踏まえ、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)や物流標準化など、「3つの柱」が掲げられました。

今回は、新たな「総合物流施策大綱」の概要と、今後の物流政策の方向性についてお伝えします。

 

1.総合物流施策大綱とは

 
「総合物流施策大綱」とは、日本の物流施策の指針を示し、関連省庁が連携をして、総合的な物流施策の推進を図るものです。
2017年度〜2020年度に実施された前総合物流施策大綱では「強い物流の構築」が掲げられました。

前大綱が推進されている間に、働き方改革関連法の施行、労働力不足の社会問題化、台風や地震など自然災害の激甚化、新型コロナウイルス感染症の拡大による非接触・非対面での業務遂行やデジタル化が求められるなど、多くの出来事がありました。

2021年6月15日に閣議決定された新たな「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」では、コロナ禍における社会情勢の変化を踏まえ、コロナ禍によって浮き彫りとなった物流業界のさまざまな課題を解消すべく「3つの柱」を打ち出しました。


 

2.総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)の概要

2021年6月15日閣議決定された新たな「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」では、物流を取り巻く厳しい状況を「革新的な取り組みを実施する好機」と位置付け、ポストコロナも見据えた物流施策として、今後5年間に取り組むべく、政策に関する「3つの柱」を打ち出しました。

<新総合物流施策大綱の3つの柱>

  1. 物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化(簡素で滑らかな物流の実現)
  2. 労働力不足対策と物流構造改革の推進(担い手にやさしい物流の実現)
  3. 強靱で持続可能な物流ネットワークの構築(強くてしなやかな物流の実現)

画像:国土交通省「総合物流施策大綱(2021年度〜2025年度)の概要

新大綱では、書類のやり取りなど対面での業務が多い物流業界において「既存の商慣行や様式に囚われず『新しい生活様式』に対応するための取り組みを加速度的に推進する」としています。

また、新大綱では施策ごとに代表的な指標のKPI(重要業績評価指標)を設定し、最終年度である2025年度までに、デジタル化の着手を100%・実現を70%と具体的な達成目標を掲げています。
物流事業者は今後5年間、施策に対する達成率を確認しながら業務改善に取り組むことが求められます。

主なKPIは、国土交通省の資料をご確認ください。

2-1.「簡素で滑らかな物流」の実現:物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化

<取り組むべき施策>

  1. 物流デジタル化の強力な推進
  2. 労働力不足や非接触・非対面型の物流に資する自動化・機械化の取組の推進
  3. 物流標準化の取組の加速
  4. 物流・商流データ基盤の構築等
  5. 高度物流人材の育成・確保

(引用:国土交通省「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」)

「物流DX」を推進するメリットは、業務内のムリ・ムダを発見し「見える化」することで、業務効率化や生産性向上が実現できることにあります。
1人当たりの生産性が向上すれば、深刻化する労働力不足を補う効果が期待できます。

新大綱では、具体的な取り組みとして、倉庫など物流施設へのロボット導入支援や、輸送車両の隊列走行・自動運転の実現に向けた取り組みを推進するとしています。
しかし、業務の機械化・デジタル化を実現するためにはコストが高額になることもあり、中小企業においては導入をためらうケースもあります。
この問題を解決するため、「IT導入補助金」や、物流総合効率化法に基づく税制特例などがありますので、活用してみてはいかがでしょうか。

画像:IT導入補助金2021/事業概要

<取り組みの具体例>
・業務プロセスのデジタル化
業務をデジタル化することで業務が平準化されるため、個人の経験やスキルに頼りすぎることなく、誰もが一定水準で業務を行うことが期待できます。

・業務全体の「見える化」
現場の状況や勤務実態を正確に把握することで、業務内のどこにムリ・ムダがあるかを把握し、的確な改善策を打ち出すことが可能となります。荷主・物流業者間での、業務の効率化に向けた話し合いにも役立つでしょう。また、時間外労働の原因を特定し長時間労働の抑制・改善に役立てることで「働き方改革」の実現にも有効です。

・非接触・非対面業務への移行
手続き書面を電子化すると対面業務を減らすことができるため、非接触・非対面業務が実現します。
また、業務前点検・点呼をデジタル化することで、管理者が遠隔で点呼を行うことが可能です。通常、点呼は対面でしか行えませんが、国土交通省が公表した「事業用自動車総合安全プラン2025」において、今後は一部の優良事業者に対し「高度な機器を使用する」ことを要件に加え、対象を拡大する方針が示されています。

・デジタル化による生産性向上
動態管理システムを導入することで、車両の発着時間、荷物の積載状況、リードタイムや出荷のタイミングの最適化が促されます。また、システムを利用し関係者間で情報共有を行うことで、ムリ・ムダのない滑らかな物流の実現に近づきます。

・サプライチェーン全体の最適化
幹線輸送・物流施設・配送など、業務プロセスごとにデジタル化が進められているケースが多くあります。今後はサプライチェーン全体で、データ連携やシステム共有を推進することで、さらなる効率化が図れます。

2-2.「担い手にやさしい物流」の実現:労働力不足対策と物流構造改革の推進

<取り組むべき施策>

  1. トラックドライバーの時間外労働の上限規制を遵守するために必要な労働環境の整備
  2. 内航海運の安定的輸送の確保に向けた取組
  3. 労働生産性の改善に向けた革新的な取組の推進
  4. 農林水産物・食品等の流通合理化
  5. 過疎地域におけるラストワンマイル配送の持続可能性の確保
  6. 新たな労働力の確保に向けた対策
  7. 物流に関する広報の強化

(引用:国土交通省「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」)

物流業界で深刻化する人手不足の原因として、他産業より長時間労働・低賃金であることが挙げられています。
将来にわたり安定した物流を維持するためには、賃金アップや長時間労働の是正に加え、若年層や女性の就業者数を増やし、誰もが働きやすい職場環境づくりが必要です。
そのためには、業務の合理化を進めることにとどまらず、求職者にとって物流業界が「ゆとりのある働き方ができる魅力ある産業」として認識してもらう必要があります。

画像:トラック運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト
 
<取り組みの具体例>
・労働環境の改善
2024年度から、トラックドライバーの時間外労働が「年960時間」に規制されます。ドライバー不足による物流の停滞を招かぬよう、業務効率化による生産性向上は必要不可欠です。
生産性向上を実現するためには、長時間労働の原因として挙げられている「契約に明記されていない付帯業務」、「荷待ち時間の削減による労働環境の改善」が急務と言えるでしょう。

しかし、これらの問題は輸配送事業者だけでは解決が難しいため、荷主側の理解と協力が欠かせません。
荷主企業は「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(平成30年法律第96号)」内の「荷主の配慮義務」などに基づき、早急な対応を行う必要があります。

・適正運賃の収受
ドライバーの待遇を改善しながら事業の存続・安定化を図るためには、「一般貨物自動車運送事業の標準的な運賃」に従い、必要な適正運賃を収受しなければなりません。
適正な運賃の収受に向け荷主側の協力と理解を得るためには、業務をデジタル化し、ドライバーの状況を「見える化」することで、具体的なデータを取得できる環境の整備が急務です。
取得したデータを元に現状と課題を荷主側に提示することで、運賃交渉がしやすくなる効果が期待できます。

・多様な人材の確保と業務の平準化
前項でも述べたとおり、業務の機械化・デジタル化を行うと、複雑な業務プロセスの平準化が進み、経験の差を問わず誰もが一定の水準で業務を行うことができるようになります。
業務の平準化が実現すれば、1人当たりの生産性が向上します。また、経験の浅い人材も即戦力として業務を行うことができるため、ベテランの業務負担の軽減・深刻化する人手不足解消に向けた好循環への道筋をつけることにもつながります。

・輸送効率化の推進
輸送効率化に向け、現在、共同配送・貨客混載や倉庫シェアリングが実施されるなど、サプライチェーン全体でさまざまな取り組みが実施されています。
また、農林水産物・食品等の流通合理化策を推進する際に課題になる「パレット規格や外装の標準化」が課題となっていますが、積載率・輸送効率向上に向けて、現在、パレットの標準化に向けた取り組みが進められています。

この他にも、輸送効率向上のための課題として、流通拠点の整備、卸売市場や農業資材保管施設等における自動化・省人化の実現の他、物流に関するデータ連携基盤の整備等が挙げられています。
サプライチェーン全体でDXを推進することで、関係者間の連携を図り、さらなる物流効率化を実現することが期待されています。

2-3.「強くてしなやかな物流」の実現:強靱で持続可能な物流ネットワークの構築

<取り組むべき施策>

  1. 感染症や大規模災害等有事においても機能する、強靭で持続可能な物流ネットワークの構築
  2. 我が国産業の国際競争力強化や持続可能な成長に資する物流ネットワークの構築
  3. 地球環境の持続可能性を確保するための物流ネットワークの構築

(引用:国土交通省「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」)

日本は自然災害の発生が多い国です。
いかなる状況にあっても強靭性・弾力性のある物流を維持し、持続可能な物流ネットワークを実現するためには、平時のうちから代替ルートの確認、物流拠点の防災対策が必要です。また、関係者間での迅速な安全確認等を行うための連絡スキームの構築・確認ができる体制を構築しなければなりません。

事業者においては、災害発生時に業務を早期に復旧させるためのBCP策定と見直しを行う他、荷主と物流事業者、同業他社間での連携体制を整備し、代替輸送・施設の運用について取り決めを行っておくことが重要です。

画像:国土交通省「荷主と物流事業者が連携したBCP(Business Continuity Plan)策定のためのガイドライン

また、過去のCariotブログでもお伝えしましたが、物流業界においても、脱炭素社会の実現SDGsなど地球環境における持続可能性への配慮と取り組みが求められています。
これらのことから現在、モーダルシフトや共同配送の実施など、輸送効率の向上と環境負荷低減を同時に実現するための向けた取り組みが推進されています。

<取り組みの具体例>
・大規模災害時の物資輸送の円滑化
支援物資の輸送が必要なケースでは、物流施設に大量の物資が搬入されることが想定されます。
物流事業者はあらかじめ、自治体と物流事業者間で調整の上協定を結ぶなどし、発災時の輸送全体を最適化できる体制を整えておく必要があります。また、避難所への支援物資の搬入を円滑に実施するための事前準備が求められます。

・BCPの策定
各企業・事業所は、災害発生後、速やかに事業を復旧させるための指針を定めた「BCP(Business Continuity Plan)」を策定することが大切です。同時に、物流機能の強化に向け、老朽化した物流施設の見直しや集約を行うこと、荷主・物流事業者など関係者の円滑な連携を可能とする体制づくりも進める必要があります。

・環境負荷の低減
鉄道・海運などを活用したモーダルシフトへの転換がさらに進むことで、輸送時に船舶・鉄道・車両から排出されるCO2の削減効果が期待できます。
また、物流DXを推進することでサプライチェーン全体の最適化に向けた体制づくりに取り組むことも、環境負荷を低減させながら持続可能で円滑な物流ネットワークを構築することにつながります。

なお、各項目には代表的なKPIが設定されています。
達成目標を随時、確認しながら対策を進め、ポストコロナを見据えた対策を進めましょう。
 

3.今後の物流施策の方向性、お役立ち資料

新大綱では、いかなる状況においても物流を維持・発展させるために必要な改革要請が記されており、全項目にわたり「機械化・デジタル化」による業務プロセスの合理化・効率化がうたわれています。

これまで、物流業界において業務の標準化やDXはなかなか進まない状況にあり、その原因として属人化している業務が多いことや、ドライバーの長時間待機が多く発生していることなど、従来の商慣行が挙げられていました。
しかし、コロナ禍によって現場が切迫し、関係者の危機感が増したこともあり、現在では具体的なDXへの取り組みが進んでいます。

今後5年間、新大綱に従い物流事業者が対応しなければならない項目は多岐に渡ります。業務の合理化・効率化が強く求められている今が、物流の構造改革や生産性向上に向けた取り組みを抜本的に改革し、DXを推進する好機といえるのではないでしょうか。

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