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Internet of Mobilities: IoTによってモビリティはサービスになる

こんにちは、Cariotニュース編集部です。
今回は前回に引き続き「人工知能は私たちを滅ぼすのか」の著者、児玉哲彦氏にご執筆いただきます。

IoTのサービスが一堂に会する「IoT Japan 2016」のSORACOMブース内で行われる児玉氏のセッションについては、本ブログの最後をご覧ください。

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2年ほど前に、イベントに参加するためにサンフランシスコを訪れました。シリコンバレーを中心とした西海岸はIT企業がひしめき、結果として、ITによるライフスタイルをいち早く体験できるエリアになっています。そして2年前の訪問では二つのサービスを通して大きな変化を実感しました。一つは、Airbnb(エアビーアンドビー)を使って個人の自宅に宿泊したこと。もう一つは、市内の移動はほとんどすべてウーバーを用いたことです。

 

特に、サンフランシスコ市内の移動については、公共交通機関が発達しておらず、またタクシーも捉まえにくいうえに中にはボッタクリなど悪質なドライバーもおり、高いお金を払ってレンタカーを借りるのが常でした。ところが、ウーバーを利用してみて驚きました。スマートフォンのアプリから乗車をリクエストすると、ものの数分で車がやってくる。ドライバーは皆気さくで、車内もきれいでした。こうしたサービスの良し悪しは乗車後にアプリから評価されるため、ドライバーは皆サービスに気を遣います。また最初に乗せてくれたドライバーは、バイオテクノロジー企業に勤めるエンジニアだというのも驚きました。

 

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前回のエントリーに書いたように、自動車メーカーは運転の複数の部分を肩代わりする自動運転技術(レベル2)を搭載したクルマを販売しています。こうしたクルマはあくまで人間の運転を補助することが前提であるため、私たちのモビリティを担保する交通インフラを劇的に変えることはありません。しかし、多くのメーカーは5年後の2021年の完全自動運転車(レベル4)の実用化を公表しています。また自動車メーカーにとどまらず、国内ではディーエヌエー、海外ではグーグルやウーバーのようなインターネットサービス事業者が自動運転の実用化へ向けた開発を積極的に進めています。

 

自動車が自動運転になるということは、単にクルマに賢いコンピューターが搭載されるということではありません。たとえばスマートフォンについて考えてみると、スマートフォンをかつての「電話」の延長線上に考える人は誰もいません。スマートフォンは本質的には、いつでもどこでもインターネットに繋がってそのサービスを利用できるようにする窓です。スマートフォンはその先にたくさんのコンテンツや人と繋がる機会を提供することでこれだけ価値のある製品になりました。スマートフォン自体のハードで差をつけるのは難しく、あらゆるスマートフォンのデザインはミニマルな板に収れんしています。昔のケータイが多種多様なデザインがあったのとは違って、もはやぱっと見てメーカーの違いを見分けるのも難しいほどです。

 

こうした原理はインターネットにつながるあらゆる製品に当てはまっていきます。例えば電機メーカーの元祖であるGEは、IoTをテコに、メーカーからサービス事業者への変身を打ち出しています。GEが製造する計測機器からエンジンまでのハードウェアは過当競争に陥っており、特定の事業者が競争優位を保つのは困難です。GEは自社の製品に埋め込んだセンサーの情報を自社のクラウドサービスに収集し、メンテナンスやユーザー企業のコンサルテーションなどに活用しています。結果、GEは2020年のソフトウェア事業の売上を、2015年の3倍、1兆8000億円まで伸ばすということです。

 

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そしてクルマもこうした流れとは無縁ではありません。最初に書いたウーバーのサービスも乗客/ドライバーの双方がスマートフォンを介してインターネットにつながることで、個人が所有するクルマというモノを、タクシーというサービスに変えているわけです。スマートフォンの普及によって、Airbnbなども含めて、このような所有から必要な時だけの効率的な利用への変化を実現するシェアリングサービスが一般的になりました。

 

今はまだ、乗客とドライバーだけがつながれています。しかし、レベル4の自動運転が実現すれば、特定の個人ではなくて、ウーバーのようなサービス事業者がたくさんのクルマを所有し、移動をしたい人に直接サービスを提供することができるようになります。

 

すると、配車については、今はドライバーどうしが乗客を競争して獲得しますが、同じ事業者のクルマどうしであれば単純に、もっともすぐに配車できるクルマが向かえばいいでしょう。また同じようなルートでの移動を希望する乗客が複数いれば、相乗りをしてワリカンにすることなども考えられます。逆に、料金を上乗せすることでより早く目的地に着くことができる急行タクシーのようなサービスも実現できます。さらには、事業者の垣根を越えて運行情報を共有できれば、経路を分散して渋滞の発生をなくすようなこともできます。

 

結果として、これまでの公共交通機関や私的に所有するクルマなどを用いる場合と比べて、移動そのもの、および都市単位で所有するクルマの台数や、移動距離、消費するエネルギーなどの資源を最適化することができるようになります。

 

インターネットがもたらす本質的な価値とは何か--その一つは、買い手と売り手、求人中の企業と求職者など、つながることで価値が生まれる相手とのマッチングで、世の中に存在する資源を効率的に分配および利用できるようになることです。クルマがインターネットにつながり、特に自動運転が実現すれば、クルマというモノはモビリティというサービスへとシフトします。その結果、利用する側にとっては、所有の負担なしにその時々のニーズにあったモビリティを得られるようになっていくのです。

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児玉氏が登壇する「IoT Japan 2016」はこちら

《児玉氏の登壇について》
日時:10/21(金)15:15 – 15:30
場所:東京ビッグサイト「IoT Japan 2016」会場
SORACOM(ソラコム)ブース内
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kodama (1) 児玉 哲彦 (Kodama Akihiko) 氏 プロフィール
慶應義塾大学にてモバイル/IoTの研究に従事、博士号取得。80万ダウンロード超のモバイル地域情報サービス「tab」の設計や、モバイルキャリア「フリービットモバイル」(現トーンモバイル)のブランディングと製品設計などに従事。その後、株式会社アトモスデザインを立ち上げ、ロボット/AIを含むIT製品の設計と開発を支援。電通/ソフトバンクグループのような大手からスタートアップまでを幅広い事業に関わる。現在は外資系IT大手にて製品マネージャーを務める。

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