Cariotのコネクテッドなブログ

自動運転に今求められている、正しい「コミュニケーションデザイン」とは

こんにちは、Cariotニュース編集部です。
今回は2回に渡って、前回のブログでもご紹介させていただいた「人工知能は私たちを滅ぼすのか」の著者、児玉哲彦氏にご執筆いただきます。

児玉氏には、IoTのサービスが一堂に会する「IoT Japan 2016」のSORACOMブース内セッションでご登壇いただきます。記事の内容はセッションにもつながりますので、予習としてもぜひお楽しみください。

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2009年の夏、私は所属していた大学院の研究プロジェクトの実験のため、宮城県の栗原市にいました。かつて栄えた鉱山跡のテーマパークの中で、ゴルフカートのような見た目の小型車で移動していました。うだるような暑さの中でしたが、ヒヤヒヤした気持ちでした。というのも私は車のハンドルに手をかけておらず、カートは自動でハンドルを切って走行していたのです。低速で大した障害物もない私有地の中でしたが、走り終えて車から降りた時にはホッとした気持ちになったのを覚えています。

 

自動運転の初体験からはや7年、今や自動運転は、自動車メーカーのセールストークに欠かせないものとなりました。ベンチャーの電気自動車メーカーテスラが「オートパイロットモード」を搭載し、日産はミニバンのセレナに、国内で販売される普及価格帯の車としては初めて同様の機能を搭載しました。これらの車は、前の車との距離を測り、アクセルやブレーキを自動で行い、道のカーブに沿ったステアリングも自動で行い、ウィンカーを出せば周囲の車の動きを把握しながら勝手に車線変更まで行います。ユーチューブを見ればこうした車を手離しで運転する動画があふれています。

 

これらを持って、私たちはついに「自動運転」の時代に入ったと言えるのでしょうか?ここには大きな誤解--さらには危険--を生む可能性があります。その理由を説明するために、上記のような自動運転技術の現在地を知る必要があります。

アメリカ政府の国家道路交通安全局は、自動運転を分類するため、自動化の度合いに基づく5レベル基準を示しています。


◆レベル0:
運転をしている人間がすべてを自ら制御する。
◆レベル1:
電子的な安定制御、ブレーキの制御など、特定の機能の制御に機械が介入する。
◆レベル2:
アクセル/ブレーキとステアリングなど、2つ以上の機能を機械が同時に制御する。例としてはクルーズコントロールなど。
◆レベル3:
機械が走行全体を制御する。人間は常に同乗し、機械が対応しきれない状況の変化などが発生した際に人間が制御を担う。
◆レベル4:
機械が完全に自立的に走行全体を制御する。人間は同乗してもしなくてもよい。

 

テスラやセレナに搭載されている機能はこの分類のレベル2に相当します。実はメルセデスなどの高級車の一部では、アクセル/ブレーキ/ステアリング制御を組み合わせたクルーズコントロールは以前から搭載されていました。自動運転技術が新しい段階に到達したというよりは、普及段階に入ったというのが実態です。BMW、フォード、ボルボなどのメーカーは、揃って2021年にレベル4の実現を目指すと発表しています。

 

そしてこのレベル2は、定義から言って車が「自動」で運転をするという理解は誤りです。運転する主体はあくまでドライバーにあり、ステアリングから手を離すことも許されていません。

 

実際、今年5月にアメリカでオートパイロットモードで走行中のテスラが前を横切ったトレーラーに突っ込みドライバーが死亡する悲惨な事故がありました。テスラ社もドライバーが運転から注意をそらしていたことが事故原因の一つであることを認めています。9月に入ってから行った自動車のソフトの更新で、ドライバーがステアリングから手を離した状態を続けるとオートパイロットモードが使えなくなるような対策を行いました。

 

この問題はテスラが誇大広告を行っていたというだけでなく、完全でない自動運転技術に本質的に伴う問題であることが知られています。人間は注意散漫な生き物です。放っておかれると、すぐに集中をそらしてしまいます。運転のように継続的な集中が求められる作業において、たとえ不完全でも機械が作業を肩代わりすると、人間は必要な集中を持続することが難しくなり、例えば急に目の前に障害物が現れるなどの緊急事態にすぐに集中を取り戻すことはできません。筆者が専門とするUIデザインの領域において、これは「人間が制御ループから外れてしまう問題」として長らく知られてきました。

 

自動運転を含む情報技術によって、個人や社会のモビリティには大変なメリットがもたらされる可能性があります。次回の記事ではそうした可能性を描いてみたいと思います。一方で、そのような世界が実現するまでに、私たちは少なくともこれから5年間以上このような問題と付き合っていくことになります。メーカーは、自動運転技術を誇大に宣伝するのではなく、現状の技術の限界をきちんと伝える。さらに、現在の自動運転の利用にあたっては、ドライバーへの追加のトレーニングが必要になると考えます。特に運転の主体はあくまでドライバーであるという認識がドライバーと共有されること。そして運転の状況の情報を継続的にドライバーに提示し、ドライバーの継続的な行動を求める。

 

このように、自動運転に代表される情報技術のもたらすメリットを享受するためには、情報/コミュニケーションの適切なデザインが強く求められています。

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児玉氏が登壇する「IoT Japan 2016」はこちら

《児玉氏の登壇について》
日時:10/21(金)15:15 – 15:30
場所:東京ビッグサイト「IoT Japan 2016」会場
SORACOM(ソラコム)ブース内
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kodama (1) 児玉 哲彦 (Kodama Akihiko) 氏 プロフィール
慶應義塾大学にてモバイル/IoTの研究に従事、博士号取得。80万ダウンロード超のモバイル地域情報サービス「tab」の設計や、モバイルキャリア「フリービットモバイル」(現トーンモバイル)のブランディングと製品設計などに従事。その後、株式会社アトモスデザインを立ち上げ、ロボット/AIを含むIT製品の設計と開発を支援。電通/ソフトバンクグループのような大手からスタートアップまでを幅広い事業に関わる。現在は外資系IT大手にて製品マネージャーを務める。

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