運送業界の2024年問題とは|会社・ドライバー・荷主への影響と対策

管理業務のデジタル化で実現する効率的な労務管理とドライバーの労働環境の改善

「働き方改革関連法」による2024年度からドライバーの時間外労働の上限規制をはじめ、ドライバーの長時間労働改善への取り組みは急務となっています。
動態管理システムを活用した労務管理と業務効率化のポイントを解説します。

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※当記事は2022年9月30日に改定されています。

こんにちは。Cariot(キャリオット)ブログ編集部です。

ドライバーの労働時間が制限される「2024年問題」。2024年問題に直面し、多くの企業が、労働体制などの根本的な見直しを迫られる可能性があることをご存知ですか。
この問題は、トラックによる貨物輸送を行う運送会社はもちろん、貨物輸送のほか保管・荷役・包装なども手がける業界まで、広く及ぶと考えられます。

今回は、2024年問題によって浮き彫りとなった物流・運送業界が抱える課題や、2024年問題の影響、取り組むべき対策についても、わかりやすくご紹介します。

 

1.2024年問題とは


2024年問題とは「働き方改革関連法の施行により、各業界で生じることが懸念される諸問題」を指します。

具体的には、2019年4月より大企業から先行して施行された「時間外労働時間の上限規制」により、時間外労働時間は原則的に月45時間、年360時間が上限となりました。

現在、トラックドライバーの時間外労働時間に上限はありません。しかし、物流・運送業界(自動車運転業務)には、5年間の猶予期間が設けられており、2024年4月から時間外労働時間の上限規制が適用されます。
2024年4月からは、労使間で36協定を結んだ場合でも、時間外労働時間の上限が960時間に制限されます。これに伴い物流・運送業界では「ドライバーの収入減」、「運賃の上昇」、「物流・運送会社の売上減」などが懸念されているのです。

なお、時間外労働時間の上限規制に違反した場合には、罰則(6か⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦)が科せられる恐れがあります。そのため、各企業には法令を遵守した業務遂行が求められます。
 

2.2024年問題で懸念される運送業界の課題


2024年問題が懸念される背景には、物流・運送業界が従来から抱えている問題も含む、以下のような課題があります。

  • 赤字企業の増加
  • 物流量の増加
  • ドライバー不足

2-1.赤字企業の増加

全日本トラック協会が2021年3月に公表した「経営分析報告書(概要版)」によると、貨物運送事業における黒字事業者の割合は令和元年度に減少し、赤字企業が増加しました。

引用:全日本トラック協会「経営分析報告書(概要版)

赤字企業が増加した背景には、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う経済活動の低迷と、貨物輸送量の減少があると考えられます。
新型コロナウイルス感染症が収束しない限り、今後も赤字企業の増加リスクの一因となり続けることが懸念されます。

2-2.物流量の増加

貨物輸送量の減少に伴う赤字企業が増加する反面、EC市場の拡大に伴う配送需要の増加により、宅配便取扱個数(物流量)は増加しています。
経済産業省が2021年7月30日に公表した「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、B to C(EC/消費者向け電子商取引)の市場規模は、年々増加傾向を示しています。

参考:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」(2021年7月30日)

2020年度の宅配便取り扱い実績は、48億3,647万個となり、前年比約12%増の5億1298万個となりました。ここ20年の推移を見ると、宅配便取扱個数は約20億個も増加しており、この点からも配送需要が大幅に増加していることがわかります。

宅配便取扱個数(物流量)の増加に伴う宅配便の小口化・多頻度化の進行は、新たな問題を発生させています。具体的には、訪問数増加に伴う再配達の増加や積載率低下など、配送効率の低下が解決すべき新たな課題として認識されています。

2-3.ドライバー不足

EC市場の拡大に伴い物流量が増加する一方、トラックドライバーは慢性的に不足している状態が続いています。

国土交通省が公表した「トラック運送業の現状等について」によると、貨物自動車運転手の有効求人倍率は2011年(平成23年)以降、全職種を上回り続けており、ドライバー不足の状態が続いていることがわかります。

引用:国土交通省「トラック運送業の現状等について

慢性的なトラックドライバー不足の背景には、以下2つの要因があると考えられます。

  • 残業過多(長時間労働)
  • 低賃金

残業過多

トラックドライバー不足の要因の1つ目として考えられるのは「残業過多(残業の多さ)」です。

厚生労働省が公表した「改善基準告示見直しについて(参考資料)」内に記載されている「自動車運転者の基礎統計」によると、トラックドライバーの超過実労働時間数は、全産業平均と比較して3倍超となっています。

参考:厚生労働省「改善基準告示見直しについて(参考資料)/自動車運転者の基礎統計

トラックドライバーの労働時間が長く、残業過多となる理由としては、荷主庭先で拘束時間(荷待ち時間や荷役時間)が発生する点も大きく関係します。また、渋滞など交通状態の影響で、予想外に労働時間が長くなるケースも少なくないと考えられます。

また、大型トラックのドライバーの平均年齢は49.4歳です。全産業の平均年齢43.2歳と比較しても、高齢化が目立ちます。若年層の人材が集まらず、定着しにくい状況もまた、残業過多で労働時間が長い現状が一因となっていると考えられます。

実際に、大型トラックドライバーは勤務時間が長く、日帰り勤務が難しいケースもあることから、子育ての障害になり、女性の参入を阻む一因となっているとの指摘もあります。

低賃金

トラックドライバー不足の要因の2つ目として考えられるのは「低賃金」です。

厚生労働省の「主な産業、性、年齢階級別賃金、対前年増減率及び年齢階級間賃金格差」(令和元年)によると、男性の運送業・郵便業の年齢計賃金は28万9,000円で、主な業種の中で3番目に低賃金であることがわかります。
なお、若年層の時点では、運送業・郵便業と他業種の賃金にそれほど大きな開きは見られません。しかし、30代以降になると、賃金に大きな開きが生じます。

参考:厚生労働省「主な産業、性、年齢階級別賃金、対前年増減率及び年齢階級間賃金格差(令和元年)

トラックドライバーが低賃金である理由としては、賃金において歩合給が高い割合を占める点が大きく関係します。また、他業種と比較して、年齢が上がるごとに賃金が上昇する構造になっていない側面もあり、経験年数を重ねても賃金があまり上がらないケースも考えられます。

 

3.2024年問題で運送業界に求められる対応

2024年までに運送業界に求められる対応は、以下の3点です。

  • 時間外労働の上限規制への対応
  • 運送業界で働くドライバーの年間の時間外労働時間は、2024年4月より「960時間」に制限されます(※サブロク協定が締結された場合)

  • 中小企業の時間外労働の賃金負担増への対応
  • 中小企業は月60時間を超える時間外労働に対して、2023年4月より​​「50%の割増賃金」の支払いが必要となります。従来、中小企業は​​「25%の割増賃金」であったため、大幅な負担増となる可能性があります。

  • 勤務間インターバル制度導入への対応
    トラック運転手の勤務間インターバル(勤務間の休息期間)は、2024年4月より、従来の8時間から「9時間〜11時間の努力義務」へ変更される見込みです。

 

4.2024年問題が運送業界に与える影響


2024年問題によって懸念される具体的な影響には、主に以下の3点が挙げられます。

  • 運送会社は売上・収益が落ちる
  • トラックドライバーは収入が下がる
  • 荷主は物流コストが上がる

4-1.運送会社は売上・収益が落ちる

運輸業界は約38兆円の産業です。その中でも、物流産業は約24兆円を占めます。(※1)
物流業界の労働就業者は約258万人で、全産業就業者のおよそ4%を占めている点からも、大規模な産業ということができます。(※2)

運輸・物流産業は、事業活動の多くをマンパワー(人の労働力)に頼る「労働集約型産業」です。そのため、売上高に対して人件費の比率が高い業種ということができます。

2024年にトラックドライバーの時間外労働時間が制限されると、会社全体として行うことができる業務量が減り、売上の減少につながる可能性が考えられます。

また、業務量を維持するために新たな人材を雇う場合、 人件費が会社の売上を圧迫する可能性も考えられます。

(※1:2017年度)
(※2:2018年度)

4-2.トラックドライバーは収入が下がる

時間外労働時間の上限規制は、トラックドライバーの長時間労働の是正と、ワークライフバランスの向上につながることが期待されます。

一方で、時間外労働時間の制限により、以前よりももらえる時間外手当が減り、収入減につながる恐れも懸念されます。

4-3.荷主は物流コストが上がる

2024年問題の影響で、ドライバーの長時間労働が規制されると、運送会社の売上・収益が減少する可能性があります。このことが、運送事業者の減収分を運賃アップなどによって補おうとする動きにつながる可能性があります。

運送事業者の経営安定化に向けた対応として、荷主側には標準的な運賃や、燃料サーチャージの導入など、適正運賃の支払いが求められています。このことが、荷主(運送の依頼元)が負担する物流コストの上昇につながることが懸念されます。

 

5.2024年問題までに運送業が取り組むべき対策


2024年問題は「運送・物流会社、トラックドライバー、荷主」の3者に不利益の及ぶ恐れのある課題ということができます。2024年の法令施行後、実際に不利益を被ることがないよう今から以下のような対策に乗り出すことが求められます。

  • 業務のDX化による労働環境の改善
  • 新たな人材の確保

5-1.業務のDX化による労働環境の改善

2024年問題への対策として、マンパワー(従業員の頑張り)だけに頼る手法には限界があります。工数を削減しながら労働環境や業務の改善を図るためには「DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進」がおすすめです。
物流・運送業界においてDXを導入・推進することは、物流・運送業界が現在抱えるさまざまな課題の解決に寄与することが期待されます。

​DXとは「デジタル技術を活用した、ビジネスモデルや業務の変革」を意味します。
業務の自動化・効率化につながるDXは、さまざまな業種で導入が進められています。また、DXの推進に必要不可欠な業務のデジタル化も進んでいます。

​​運送業の場合「動態管理システムの導入」が、最も簡単で効果的なDX推進の方法の1つです。​​

​動態管理システムの中には、日報・月報の自動作成、車両位置をリアルタイムで荷主と共有する機能、効率的な配送計画の作成サポート機能などを備えたサービスもあります。これらの機能を活用することで、 各種業務が削減でき、業務負担の大幅な軽減や省人化が実現できます。

こういった管理システムについてもっと知りたい、という方は、こちらの記事をご覧ください。

5-2.新たな人材の確保

2024年問題に際してトラックドライバーが不足する場合、新たな人材の確保を検討する必要があります。

現在、自動車運送事業の主力は中高年男性であり、その42.8%を50歳以上が占めるなど、高齢化が目立つ状況となっています。(※3)

そこでDX化にしっかりと取り組み、労働環境を改善することで、若年層や女性の労働者にアピールすることが重要といえるでしょう。

特に女性については、大型免許の保有者が、13万4,000人以上存在します。しかし、輸送・機械運転に従事する女性の比率は、わずか3.4%(※3)と低いのが現状です。

※3:平成31・令和元年

人材確保で活用できる助成金

女性の就業者数を増加させるための施策として現在、国土交通省はトラック運送業界における女性の進出をサポートする「トラガール推進プロジェクト」をスタートさせています。支援の一環として、以下のような助成金等が活用できる可能性があります。新たな人材確保に際しては、ぜひチェックし、利用を検討しましょう。

  • 両立支援等助成金
  • 女性トラック運転手の採用においては、育休・復帰に関わるサポートに役立つ「女性活躍加速化コース」が利用できる可能性があります。

  • 事業所内保育施設設置・運営等支援助成金
  • 保育施設を、事業所内に設置・運営・増築する際に支給されます。

  • トライアル雇用奨励金
  • 妊娠・出産・育児などのために離職した求職者に対して、一定期間のトライアル雇用をした企業に対して支給されます。

  • 若者チャレンジ奨励金
  • 若年層に対して、正社員雇用を前提とした訓練を実施する際に支給されます。

 

6.業務のDX化にはCariotの導入がおすすめ

低い導入ハードルで本格的なDX化を実現する、クルマと企業をつなぐドライバー働き方改革クラウド「Cariot」では、車両を使い業務を行う皆様の業務負担を大幅に軽減しながら、業務効率化・生産性向上をサポートする多くの機能を備えています。
限られた労働時間で、個々の従業員たちが、最大のパフォーマンスを発揮することができる労働環境の整備にお役立てください。

・走行履歴
車両が走行するだけで詳細な走行履歴を記録できる機能です。いつ・どこを・どのような速度で走行し、どこに・どの程度の時間、滞在したかを振り返って確認することができます。
ムダな走行をしていないか、長時間滞在している箇所がないかを俯瞰して確認できるため、業務効率化に活用できます。

・DriveCast
本機能で発行されたURLを社外の関係者に送信することで、車両の現在地が共有できる機能です。Cariotの管理者アカウントを持っていない方も利用できます。
スマートフォンやタブレットから到着予測時間などを確認することができるため、荷主からの問い合わせ対応や、ドライバーへの電話連絡の回数を大幅に削減できます。

・運転報告
運転時間、走行距離、訪問件数や滞在時間、駐停車等の時間、位置情報を自動で記録できます。また地図上でも走行軌跡を確認できます。
Cariotモバイルアプリを利用していれば、ステータス(移動や配送、休憩等)や任意の活動項目の登録ができるので、詳細な業務活動が確認できます。
急いで車両位置を確認したい時や、過去の走行、滞在履歴などを確認したい時に役立ちます。

・DriveView
車の現在地・目的地への到着時間・停車場所での待機時間のみならず、長時間停車など異常が発生していないか、予定に空きがありすぐに対応できる車両はどれかなど、さまざまな情報を1つの画面で確認することができます。
また、依頼のあった顧客名で検索することで、その顧客に向かう予定がある車両と周辺の車両が今・どこにいるかがモニター上で確認でき、急な依頼に素早く対応できるようになります。

・レポート&ダッシュボード
会社ごと、担当者ごとなど、見たいデータをグラフィカルなレイアウトでまとめて表示できる機能です。データは随時更新されるため、常に最新の情報が確認できます。


<関連記事>
物流DXとは? 実施するメリットや導入事例、現状の課題

 

7.まとめ

物流・運送業界における2024年問題とは、トラックドライバーの時間外労働時間に上限が設けられることで影響が懸念される諸問題を指します。

具体的には「運送会社の売上・収益の低下」、「トラックドライバーの収入低下」、「荷主の物流コスト上昇」などの影響が考えられます。

2024年問題に対しては、物流・運送業界が現在抱える「赤字企業の増加」、「物流量の増加」、「ドライバー不足」などの課題に対し、根本的なアプローチをすることが有効な対策となります。

具体的には、DXの導入によって、業務効率化・自動化を推進し、労働環境の改善を目指すことが最良策のひとつです。

クルマと企業をつなぐドライバー働き方改革クラウドCariotは、簡単にDXが推進できるシステムです。
「業務効率化に効果的な動態管理システム」、「経営者が選ぶ動態管理システム」、「使いやすさ満足度動態管理システム」でNo.1(※4)を獲得するなど、利用者から高い信頼性を獲得しています。

DX導入による、業務効率化・自動化は、働き方改革が現実となる物流・運送業界において不可欠です。2024年が迫る今こそ、DX導入を検討する、またとない好機といえるでしょう。

(※4:日本マーケティングリサーチ機構・2020年7月期ブランドのイメージ調査)

 
 
※本記事の情報、及び画像は、記事作成時点のものです。詳しくは最新の情報をご確認ください。
※2022.09.30 改訂

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