AI×車両データ分析で燃費・コスト削減|総務が知るべき最新の車両管理

Cariotを活用した車両管理完全ガイド

「車両管理とは」という基礎知識から社用車事故を防ぐ安全運転のポイントまでを解説しています。これから車両管理をはじめる方や、もっと効率的な管理体制を整えたいご担当者におすすめの資料です。

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社用車を複数台管理する総務・車両管理担当の皆さま、こんにちは。Cariot(キャリオット)ブログ編集部です。

「Excelで燃費を集計しているが、月末にならないと全体像が見えない」
「車両ごとの稼働率を把握したいが、データが散らばっていて集計が大変」
「走行距離や給油記録はあるのに、コスト削減の糸口が見つからない」

こうした悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

近年、テレマティクス技術の普及により、車両の位置情報・走行データ・運転挙動といった「車両データ」が自動で取得できるようになりました。さらに、AI(人工知能)を活用すれば、膨大なデータから燃費最適化・稼働率向上・安全運転促進・コスト削減・CO2削減といった経営課題に直結する分析が可能になります。

※テレマティクス:Telecommunication(通信)とInformatics(情報科学)を組み合わせた造語で、カーナビのようにリアルタイムな情報サービスを提供する技術のこと

しかし、「データを取得しただけで満足」「ダッシュボードを導入したが、現場で使われない」「指標が多すぎて何を見ればいいかわからない」といった失敗も多く見られます。
AIやBIツールの導入は、あくまで手段にすぎません。重要なのは「データを取得→整備→可視化→分析→施策→効果測定」という運用フロー全体を設計することです。

※BIツール:ビジネス・インテリジェンスツールとは、企業活動によって日々蓄積されていくデータを収集・分析し、戦略的な意思決定を支援するツール(ソフトウェア)のこと

本記事では、社用車10〜300台規模を想定し、総務・車両管理担当が「AI車両データ分析」を実務で使いこなすための運用設計・KPI(Key Performance Indicator)設計・BI連携の具体策を解説します。

 

1.総務のExcel集計あるあるとデータ活用の壁

手作業の限界:燃費も稼働率も「見える化」できていない

多くの企業では、車両管理を紙の運転日報やExcel台帳で行っており、各ドライバーが手書きで記入した日報を総務が回収しています。走行距離・給油量・訪問先などを転記・集計するなど、この作業だけで月初の数日間が消えていくケースも珍しくありません。

手作業による管理には以下のような限界があります。

  • リアルタイム性の欠如:月末にならないと全体の燃費や稼働状況がわからず、問題の発見が遅れる
  • 記入漏れ・誤記:ドライバーの記入ミスや転記ミスが発生し、データの信頼性が低い
  • 部分最適に陥る:車両ごとの数字は見えても、部署横断・車種横断での比較分析が難しい
  • 分析工数不足:集計だけで手一杯で、「なぜ燃費が悪化したのか」「どの車両を減らせばコスト削減できるか」といった分析に時間を割けない

こうした状況では、せっかく取得したデータが眠ったままになり、燃費改善や稼働率向上といった経営改善の機会を逃してしまいます。

データはあるのに活かせない3つの理由

テレマティクスやデジタルタコグラフ(デジタコ)を導入済みの企業でも、「データは取れているが活用できていない」という声をよくお聞きします。
主な理由は以下の3つです。

理由1 データが散在している

走行データはテレマティクス、給油記録はガソリンカードの明細、整備履歴は整備工場の紙伝票と、データが複数の場所に分散していると統合分析が困難です。「燃費=給油量÷走行距離」を計算するだけでも、複数のシステムやファイルを突き合わせる必要があり、工数がかかります。

理由2 データの粒度や品質がバラバラ
あるドライバーは日報に「訪問先A社」と記入するが、別のドライバーは「A社(東京支店)」と書くなど、こうした表記ゆれや入力ルールの不統一は、データ分析の精度を大きく下げます。また、GPSの精度のばらつきやセンサー異常による欠損データも品質問題として顕在化します。分析をするためのデータが正確でなければ、適切な意思決定はできません。

理由3 分析スキル・ツールが不足している
データはあっても、「どの指標を見れば改善につながるのか」「どう可視化すればドライバーや経営層に伝わるのか」といったノウハウが不足していると、Excel上での集計止まりになってしまいます。BIツールやAI分析ツールの導入も選択肢ですが、適切な運用設計なしでは、導入しただけで終わるリスクがあります。

 

2. AI×車両データ分析で何が変わるのか?

テレマティクスで取得できる車両データの種類

テレマティクスは、「Telecommunication(通信)」と「Informatics(情報科学)」を組み合わせた造語で、使用される車載デバイス(GPS、加速度センサー、OBD-II通信など)を通じて車両情報をリアルタイムで収集・送信する技術です。
取得できる主なデータは以下の通りです。

  • 位置情報:GPS座標、移動ルート、滞在時間
  • 走行データ:走行距離、走行時間、速度、アイドリング時間
  • 運転挙動:急加速、急減速、急ハンドル、速度超過の回数
  • 燃料消費:燃費(km/L)、燃料消費量
  • 車両状態:エンジン回転数、冷却水温、バッテリー電圧、故障コード(DTC)
  • 環境データ:外気温、天候(連携サービス経由)

これらのデータは、従来の手書きの日報では取得できなかった「秒単位の詳細情報」を含みます。そのため、燃費悪化の原因を「アイドリングが長い」「急加速が多い」といった具体的な運転挙動レベルまで掘り下げられるのが大きな特徴です。

参考:トラック事業者の適切な運行管理と安心経営のためのICTガイドブック【関東トラック協会】

AIが実現する5つの分析領域(燃費・稼働・安全・コスト・CO2)

AIを活用した車両データ分析は、大きく以下の5つの領域で効果を発揮します。

  1. 燃費最適化
    AIは、走行ルート・運転挙動・車両特性・天候などの多変量データから「燃費に影響する要因」を分析します。例えば、「車両Aは他車と比べてアイドリング時間が長く、燃費が平均より10%悪い」といった個別要因を特定し、ドライバーへのフィードバックやルート変更の提案が可能です。
  2. 稼働率向上
    車両ごとの稼働日数・走行時間・待機時間を可視化し、「使われていない車両」や「特定車両への集中」を検出します。AIは過去の稼働パターンから「車両台数の適正化」や「レンタカー切り替え」の判断材料を提供します。稼働率が低い車両をリースバックや売却することで、維持費削減につながります。
  3. 安全運転促進
    急加速、急ブレーキ、速度超過などの危険挙動をAIがリアルタイムで検知し、ドライバーにアラートを発するとともに、管理者へ通知します。蓄積データから「事故リスクが高いドライバー」を予測し、個別指導や再教育を計画的に実施できます。
  4. コスト削減
    燃料費・整備費・保険料・車両購入/リース費などのコストデータを統合分析し、「どの車両・どの運用パターンでコストが高いか」を可視化します。AIによる予測メンテナンス(故障予兆検知)により、突発的な修理費用を抑え、車両の稼働停止リスクを低減します。
  5. CO2削減
    走行距離・燃料消費量からCO2排出量を自動計算し、企業の環境目標(カーボンニュートラル・脱炭素)への貢献度を定量評価できます。EVへの切り替えシミュレーションや、エコドライブ促進による削減効果の試算も可能です。

「見える化」だけでは不十分な理由

ダッシュボードで燃費や稼働率をグラフ化すれば「見える化」は達成できますが、それだけでは改善につながりません。
重要なのは以下の3点です。

  • 異常を検知する:AIによる異常検知(例:燃費が急に悪化した車両をアラート)
  • 原因を分析する:なぜ燃費が悪化したのか(運転挙動?車両故障?ルート変更?)をAIで要因分析
  • 施策を実行する:分析結果をもとに、ドライバー指導・ルート見直し・車両入れ替えなどのアクションを起こす

「見える化→検知→分析→施策実行」の一連の運用フローを設計することが、AI車両データ分析の成功の鍵です。

 

3.車両管理を最適化するKPI設計の具体例

目的別KPI一覧表(燃費・稼働率・安全・整備コスト・CO2削減)

KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)は、目標達成に向けた進捗を定量的に測る指標です。車両管理において、「何を改善したいか」に応じて適切なKPIを設定することが、データ活用の第一歩となります。

以下は、目的別のKPI設計例を表にまとめたものです。

目的 見るべき指標(KPI) 取れるデータ例 施策例 期待効果
燃費改善 ・車両別平均燃費(km/L)
・燃費悪化車両数
・アイドリング時間率
・走行距離
・給油量
・アイドリング時間
・急加速回数
・アイドリング削減指導
・エコドライブ研修
・燃費の良い車種への入れ替え
・燃料費の削減
稼働率向上 ・車両稼働率(稼働日/営業日)
・平均走行時間
・待機時間
・稼働日数
・走行時間
・エンジンON/OFF時刻
・低稼働車両の売却、リース変更
・車両予約システム導入
・営業エリア見直し
・車両台数の削減
・維持費削減
安全運転 ・危険挙動発生率(急加速、急ブレーキ、速度超過)
・事故、ヒヤリハット件数
・急加速、急ブレーキ回数
・速度超過時間
・ドライブレコーダー映像
・危険挙動ドライバーへの個別指導
・安全運転表彰制度
・ルート見直し
・事故件数の削減
・保険料削減
整備コスト削減 ・車両別整備費(円/km)
・故障、修理頻度
・タイヤ交換サイクル
・整備履歴
・走行距離
・エンジン異常コード
・オイル交換記録
・予防保全スケジュール自動化
・故障予兆検知(AI)
・整備工場の相見積もり
・整備費の削減
・稼働停止リスク低減
CO2削減 ・総CO2排出量(t-CO2/年)
・車両別CO2排出原単位(g-CO2/km)
・走行距離
・燃料種別
・燃費
・EVへの切り替えシミュレーション
・エコドライブ促進
・配送ルート最適化
・CO2排出量の削減
・環境報告書への貢献

KPI設定で失敗しないための3つの原則

KPI設定の際によくある失敗は、「指標が多すぎて何を見ればいいかわからない」「目標が現場の実態と乖離している」「測定できない指標を設定してしまう」といったものです。
以下の3原則を守ることで、実効性の高いKPIを設計できます。

原則1:SMART原則に従う
  • Specific(具体的):「燃費を改善する」ではなく「車両別平均燃費を8.5km/L以上にする」
  • Measurable(測定可能):テレマティクスやデジタコで自動取得できる指標を選ぶ
  • Achievable(達成可能):過去実績や業界ベンチマークを参考に現実的な目標を設定
  • Relevant(目標との関連性):経営目標(コスト削減、CO2削減など)に直結する指標を選ぶ
  • Time-bound(期限設定):「2025年度末までに」など期限を明確にする

原則2:5〜7個程度に絞り込む
人間が同時に追跡できる指標数には限界があります。目安として、全社で10〜15個、各部署で5〜7個程度のコアKPIに絞り込み、ダッシュボードのトップ画面に配置することで、「今どこを改善すべきか」が一目でわかるようにしましょう。

原則3:現場と合意形成する
KPIを一方的に押し付けると、現場の協力が得られず形骸化してしまいます。KPI設定の段階でドライバーや営業部門を巻き込み、「なぜこの指標が重要なのか」「達成したらどんなメリットがあるのか」を共有することで、納得感と当事者意識を醸成できるでしょう。

 

4.AI車両データ分析の運用フロー【6ステップ】

AIによって車両データ分析を成功させるには、「データを取得して終わり」ではなく、データを改善アクションにつなげる運用フロー全体を設計することが重要です。
以下の6ステップで構成される運用サイクルを回すことで、継続的な改善が可能になります。

ステップ1:データ取得(テレマティクス・デジタコ・日報)

まず、分析に必要なデータを収集する仕組みを整えます。

主なデータ取得手段
  • テレマティクス:車載デバイスでGPS・走行データ・運転挙動を自動取得
  • デジタルタコグラフ:速度・走行距離・運転時間を記録(運輸業では法令で装着義務あり)
  • ガソリンカード明細:給油量・給油日時・単価をデータ化
  • 運転日報(電子化):訪問先・業務内容をスマホアプリなどで入力
  • 整備記録:整備工場のシステムや紙伝票からデータ化

取得するデータの種類・粒度・頻度は、後述のKPIに応じて決定します。例えば、「燃費改善」が目的なら走行距離・給油量・アイドリング時間が必須、「稼働率向上」なら稼働日数・走行時間が必要です。

ステップ2:データ整備(品質チェック・クレンジング)

生データには欠損・重複・誤入力・表記ゆれなどの品質問題がつきものです。
分析精度を高めるため、以下の作業でデータを整備します。

データ品質チェックの項目
  • 欠損値の確認:GPS信号が途切れた区間、給油記録の漏れなどを検出
  • 異常値の除外:明らかにおかしい数値(燃費100km/L、速度300km/hなど)を削除またはフラグ付け
  • 表記統一(名寄せ):訪問先名称の揺れ(「A社」「株式会社A」「エー社」など)を統一
  • データ粒度の統一:日次・週次・月次など、集計単位を揃える
  • タイムゾーンの確認:複数拠点で運用する場合、時刻データのタイムゾーンを統一

データ整備は手作業では工数がかかるため、ETLツールやデータクレンジングツールを活用すると効率的です。また、AI側で異常値を自動検出する仕組みを組み込むことも有効です。

※ETLツール:さまざまなシステムに分散されているデータを集めて抽出(Extract)し、分析しやすいフォーマットに加工・整理(Transform)し、書き出す(Load)ソフトウェア

ステップ3:可視化(ダッシュボード・レポート設計)

整備したデータをダッシュボードやレポートで可視化します。ここでのポイントは、「誰が」「何を判断するために」「どのタイミングで」見るかを明確にすることです。

ダッシュボードの階層設計例
  • 経営層向け:全社の燃費・稼働率・コスト推移を月次で表示(トレンド重視)
  • 総務・車両管理担当向け:車両別・ドライバー別の詳細データ、異常アラート一覧(日次更新)
  • ドライバー向け:自分の運転スコア、前日の燃費・危険挙動回数(即時フィードバック)

可視化ツールの選択肢

  • 車両管理システム付属のダッシュボード(Cariotなど)
  • BIツールとのAPI連携
  • Excelピボットテーブル(小規模・初期段階向け)

ダッシュボードは「見やすさ」だけでなく「気づきやすさ」も重要です。しきい値を超えたら色を変える、異常発生時にメール通知する、といった仕組みがあれば、問題の早期発見につながります。
例えば、車両管理システム側でリアルタイムデータを取得し、必要に応じてBIツールと連携する構成にすることで、Excel集計から段階的に脱却することが可能です。

ステップ4:AI分析(異常検知・予測・最適化)

可視化されたデータをもとに、AIが以下のような高度な分析を実行します。

主なAI分析手法
  • 異常検知:統計的手法(外れ値検出、Zスコア)や機械学習で「通常と異なる挙動」を検出(例:燃費が急に10%悪化した車両)
  • 要因分解:燃費悪化の原因を「アイドリング時間+30%」「急加速+15回」など要因ごとに分解
  • 予測:過去データから「来月の燃料費」「次回故障までの走行距離」を予測
  • 最適化:複数の制約条件(配送時間、積載量、ドライバー勤務時間など)のもとで最適な配送ルートを計算

例えば、Databricksの地理空間アナリティクスとAIを活用した事例では、フリート効率を最大30%改善、インフラコストを最大25%削減、事故率を最大20%削減するとされています。

出典:自動車業界の未来を切り拓く:スケーラブルな地理空間アナリティクス&AIを理解する(2025年11月)【Databricks】

ステップ5:施策実行(改善アクション・現場フィードバック)

AI分析の結果を、具体的な改善アクションに落とし込みます。

施策実行の例
  • ドライバー指導:燃費が悪い上位10%のドライバーに個別フィードバック、エコドライブ研修を実施
  • ルート変更:AIが提案した最適ルートを試験導入し、燃費・配送時間を比較
  • 車両入れ替え:稼働率が低い車両を売却、レンタカーやカーシェアへ切り替え
  • 整備スケジュール見直し:故障予兆が検出された車両を優先的に点検
  • 表彰制度:安全運転スコアが高いドライバーを表彰し、モチベーション向上

施策実行では、現場への丁寧な説明と巻き込みが重要です。「AIが決めたから」と一方的に押し付けるのではなく、「こういうデータが出たので、こう改善したい。現場ではどう思うか?」と対話することで、協力を得やすくなります。

ステップ6:効果測定(PDCA・KPI見直し)

施策実行後、設定したKPIに対する効果を測定し、PDCAサイクルを回します。

効果測定のポイント
  • Before/After比較:施策前後の燃費・稼働率・事故件数などを比較
  • 統計的有意性の確認:偶然の変動か、施策の効果かを統計検定で判断(A/Bテストなど)
  • コスト対効果の算出:施策にかかった費用(研修費、システム導入費など)と削減効果(燃料費削減額など)を比較
  • KPIの見直し:効果が出ない場合、KPI設定が適切だったかを再検討

効果測定の結果は経営層や現場に共有し、「データ活用で実際に◯◯万円削減できた」「事故が△件減った」といった成功体験を積み重ねることで、組織全体のデータ活用文化が醸成されます。

 

5.BI連携とダッシュボード設計の考え方

BIツール連携のメリットと導入パターン

BIツールは、複数のデータソースを統合し、柔軟な可視化・分析を可能にするツールです。車両管理システム単体のダッシュボードでは対応しきれない「他システムとのデータ統合」や「高度な分析」が必要な場合、BI連携が有効です。

BI連携のメリット
  • データ統合:テレマティクス、ガソリンカード、会計システム、勤怠システムなど複数のデータを一元化
  • 柔軟な可視化:経営層・総務・現場それぞれに最適化されたダッシュボードを作成
  • 高度な分析:トレンド分析、セグメント別比較、予測モデルの組み込みが容易
  • リアルタイム更新:API連携により、データを自動更新(手作業でのExcel集計が不要)

導入パターンの選択肢

  • 車両管理システム標準機能を使う:初期コストを抑えたい、シンプルな可視化で十分な場合
  • BIツールと連携する:他システムとのデータ統合や高度な分析が必要な場合(Power BI、Tableau、Looker Studioなど)
  • カスタムダッシュボードを開発する:独自の業務フローに完全に合わせたい場合(要開発リソース)

中小企業では、まず車両管理システムの標準機能でスタートし、必要に応じてBIツールを段階的に導入するのが現実的です。

ダッシュボードに表示すべき指標とデータ粒度(KPI設計)

ダッシュボード設計で重要なのは、「見る人の役割」と「判断のタイミング」に応じて、表示する指標とデータ粒度を変えることです。すべての指標を一律に表示すると、経営層には情報が細かすぎる、現場では意思決定が遅くなるといった問題が起こります。

役割別の指標設計例

見る人(役割) 主な目的 表示すべき指標 データ粒度(更新頻度)
経営層 経営判断・投資判断 ・全社平均燃費
・総車両コスト推移
・車両稼働率
・CO2排出量
月次・四半期
総務・車両管理担当 異常検知・改善施策立案 ・車両別燃費
・車両別稼働率
・危険挙動回数(急加速、急ブレーキ等)
・車両別整備費
日次・週次
営業マネージャー 部署内の運用改善・指導 ・部署別燃費
・ドライバー別安全運転スコア
・訪問件数/稼働実績
週次
ドライバー 自己改善・安全意識向上 ・運転した車両の燃費
・運転スコア
・前日の急加速、急ブレーキ回数
リアルタイム・日次

データ粒度の注意点

経営層向けには「集約データ」を見せ、トレンドやベンチマークとの比較を重視し、総務・現場向けには「詳細データ」を見せ、個別車両・ドライバー単位での異常や改善ポイントを明示しておくと効果的です。

リアルタイム更新が必要な指標(位置情報、緊急アラート)と、日次・週次で十分な指標(燃費集計)を区別するようにしてください。

更新頻度・権限設計・アラート設定

ダッシュボードの運用で見落とされがちなのが、「更新頻度」「権限設計」「アラート設定」です。ここではそれぞれの設定について解説します。

更新頻度の設計
  • リアルタイム(数秒〜数分):位置情報、危険挙動検知、事故通知
  • 日次(深夜バッチ):燃費集計、稼働率、運転日報
  • 週次・月次:コスト集計、KPI推移レポート、経営会議資料

頻繁すぎる更新はシステム負荷とコスト増につながるため、「どのタイミングで判断が必要か」に応じて最適化します。

権限設計(アクセスコントロール)

車両データには個人情報(ドライバーの位置情報、運転挙動)が含まれるため、適切な権限設計が必須です。

  • 経営層:全社データの閲覧のみ(個人特定できない集約データ)
  • 総務・車両管理担当:全車両・全ドライバーの詳細データ閲覧・編集
  • 営業マネージャー:自部署の車両・ドライバーのみ閲覧
  • ドライバー:自分のデータのみ閲覧

権限設計は、個人情報保護法や社内規程に基づき、人事・法務部門と協議のうえ決定するのが望ましいでしょう。

アラート設定(異常通知)

異常を早期発見するため、しきい値を超えた際にメール・チャット(Slack、Teamsなど)で自動通知する仕組みを組み込むと良いでしょう。

  • 燃費アラート:車両別燃費が前週比10%以上悪化
  • 稼働率アラート:稼働率が30%を下回る車両が3日連続発生
  • 安全アラート:急ブレーキ・速度超過が1日10回以上
  • 整備アラート:次回車検まで30日未満、または走行距離が予防整備基準に到達

アラート設定では「通知疲れ」を防ぐため、重要度に応じて通知レベル(緊急/警告/情報)を分け、本当に対応が必要なものだけを通知するよう調整します。

 

6.失敗パターンと回避策【4つの落とし穴】

AI車両データ分析を導入しても、運用設計の不備により期待した効果が出ないケースがあります。
ここでは代表的な4つの失敗パターンとその回避策を紹介します。

データ品質問題(欠損・誤入力・粒度不揃い)

失敗パターン1

テレマティクスデバイスの取り付け不良でGPS信号が途切れる、ドライバーが給油記録をつけ忘れる、訪問先名称の表記ゆれが多く集計できないなど、データ品質問題が放置されると、分析結果の信頼性が低下し、経営層や現場から「データが間違っている」と不信感を持たれてしまいます。

回避策
  • 取得段階でのチェック:デバイス取り付け後に試験走行を行い、データが正常に取得されているか確認
  • 自動バリデーション:システム側でデータ入力時に必須項目チェック、異常値チェックを実施
  • 定期監査:月1回、データ品質レポートを作成し、欠損率・異常値率を確認
  • 入力ルールの統一:訪問先マスタを整備し、ドロップダウン選択にするなど、表記ゆれを防ぐ
  • AIによる補完:軽微な欠損は、前後のデータやパターンから推定して補完する仕組みを導入

現場に定着しない(操作が複雑・メリットが不明確)

失敗パターン2

ダッシュボードを導入したが、操作が複雑でドライバーや現場マネージャーが使わない。総務担当だけが見ているが、現場にフィードバックされず改善につながらない。「データを見ても何をすればいいかわからない」という声が上がる。

回避策
  • シンプルなUI設計:スマホからも見やすい、直感的に操作できるインターフェイスを選ぶ
  • 段階的導入:まず一部の車両・部署でトライアル運用し、フィードバックを反映してから全社へ展開する
  • 現場へのメリット明示:「データを見ることで残業が減る」「安全運転スコアが高いと表彰される」など、現場にとっての利益を具体的に示す
  • 操作トレーニング:導入時に現場向け説明会を実施し、「何を見て、何をすればいいか」を具体例で説明
  • 継続的なコミュニケーション:月次で「今月の改善事例」を共有し、データ活用の成功体験を積み重ねる

指標過多で見るべき数字がわからない

失敗パターン3

「あれもこれも見たい」と欲張った結果、ダッシュボードに20個も30個も指標を並べてしまい、「結局どこを見ればいいのかわからない」状態に陥る。経営層も現場も混乱し、データ活用が停滞する。

回避策
  • KPIを5〜7個に絞る:「燃費・稼働率・危険挙動・整備費・CO2」など、本当に重要な指標だけをトップ画面に配置する
  • 階層構造にする:トップ画面では集約指標のみ表示し、詳細はドリルダウン(クリックして深掘り)できるようにする
  • 色分け・アラートで優先度を示す:しきい値を超えた指標を赤く表示、改善余地が大きい項目を強調
  • 定期的な見直し:四半期ごとに「今見ている指標は本当に有効か」を確認し、使われていない指標は削除

プライバシー・セキュリティ対策の不足

失敗パターン4

ドライバーの位置情報や運転挙動は、適切な管理を怠ると、プライバシー侵害や情報漏洩のリスクがあります。「常に監視されている」と感じたドライバーがモチベーション低下・退職につながるケースもあります。

回避策
  • 利用目的の明示:「位置情報は業務効率化と安全管理のために使用し、個人の監視目的ではない」と社内規程で明文化
  • 同意取得:ドライバーから書面で同意を取得し、取得データの種類・利用目的・保存期間を説明
  • アクセス権限の厳格化:必要最小限の担当者のみがデータにアクセスできるよう権限設定
  • 匿名化・集約化:経営層向けレポートでは個人を特定できない集約データのみ表示
  • セキュリティ対策:データ通信の暗号化、クラウドストレージのアクセス制御、定期的な脆弱性診断
  • 外部監査:個人情報保護法やISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)に準拠しているか、外部専門家による監査を実施

 

7.まとめ

AI車両データ分析は、燃費改善・稼働率向上・コスト削減といった経営課題に直結する強力な手段です。ただし、導入すれば自動的に成果が出るわけではありません。重要なのは、「データ取得→整備→可視化→分析→施策→効果測定」という運用フロー全体を設計し、KPIを軸にPDCAを回し続けることです。

まずは現状のデータ棚卸しから、Excelや紙に散らばっているデータを一覧化し、「どのデータが取得できていて、どのデータが不足しているか」を把握することが第一歩です。
また、全社一斉導入ではなく、まず1〜2部署、10〜20台程度でPOC(概念実証)を実施し、効果を確認してから拡大するのが現実的です。

社内環境だけで導入が難しい場合は、車両管理システムベンダーやBIツールベンダーの無料相談、業界セミナー、他社事例の視察などを活用し、自社に合った設計のヒントを得ることも有効です。

AI車両データ分析は、一度仕組みができれば継続的な改善が可能になり、燃料費削減・事故減少・CO2削減といった成果が積み上がっていきます。本記事が、貴社の車両管理DXを推進する一助となれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これからもCariotは、より便利に使っていただくための機能の開発を進めてまいります。
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