ドライバーの労働環境と健康問題 新たな法整備と必要な対応とは

2020.01.14管理者必読の法律情報 , 車両管理ニュース , Cariot機能紹介
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こんにちは。Cariot(キャリオット)編集部です。
2019年4月1日から大企業が先行する形で「働き方改革関連法案」が施行されました。中小企業は20年4月からの施行です。
すでに、ドライバーの労働環境改善・商慣行にとらわれない業務効率化に取り組む企業や、19年3月から始まった「ホワイト物流推進運動」に賛同し、自主行動計画を提出する企業が増えています。
しかし、長い拘束時間・それに起因する健康問題など、ドライバーを取り巻く環境は問題が山積しています。
今回は「ドライバーの労働環境・健康管理」についてまとめました。

【目次】
1.道半ば…ドライバーを取り巻く労働環境はどう変わった?
  1-1.違反は懲役?罰金?減らないドライバーの長時間労働
  1-2.脳・心疾患で労災認定が最も多い職種は「運輸関係」
  1-3.荷主第一・長い手待ち時間・賃金未払い…長時間労働に複数の要因
2.ドライバーの負担軽減が急務!自社対応だけでは限界も
  2-1.長時間労働を改善するための国の取り組み
  2-2.自社の対応だけでは減らせないドライバーへの負担
  2-3.アナログからデジタルへ 「見える化」で問題点を抽出
3.法律・罰則だけでは難しい⁈工数を増やさず細やかな管理をする方法
  3-1.よりよい環境づくりの取り組みは始まったばかり
  3-2.業務の手間を増やさず細やかな管理を実現

1.道半ば…ドライバーを取り巻く労働環境はどう変わった?

1-1.違反は懲役?罰金?減らないドライバーの長時間労働

2019年4月「働き方改革関連法」が施行されました。大企業ではすでに施行され,中小企業は20年4月1日から導入しなければならない法律です。

労働者は1日8時間・週40時間・法律で定められた休日が少なくとも週1日、それを超える場合は、労使間で「36(さぶろく)協定」を結び、時間外労働を行う業務の種類・時間外労働の上限などを、あらかじめ決めておく必要があります。 「働き方改革関連法案」の施行で、これらにも罰則が設けられました。

時間外労働は月45時間・年間360時間までです。特別の事情がある場合で労使の合意があったとしても、年720時間以内・休日労働を含む複数月の平均が80時間以内、月100時間未満(休日労働を含む)を超えて働くことはできません。
これら違反した場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることがあります。


画像:厚生労働省「時間外労働の上限規制わかりやすい解説

24年4月1日から、ドライバー(自動車運転業務)の時間外労働の上限は「年間960時間」とする規制が始まります。
その際、ドライバーとそれ以外の業務ではっきりとした切り分けができず、解釈次第でドライバーとして扱うかどうかが変わってしまう人がでてくるといった懸念もあります。


画像:厚生労働省「時間外労働の上限規制わかりやすい解説

全日本トラック協会の資料によると、トラックドライバー の年間労働時間は、大型のドライバーで2,604時間、全産業の平均2,124時間より2割長くなっています。
19年11月3日、厚労省が行なった電話相談「過重労働解消相談ダイヤル」には、窮状を訴えるさまざまな声が寄せられています。その中には「1日17時間を超える労働時間」というドライバーからの訴えが紹介されています。
労働時間が長引くことで、睡眠不足・休養時間が短くなります。ドライバーの場合はそれに加え、業務の特性上、不規則勤務・手待ち時間の長さが加わります。その結果、ドライバーの脳・心臓疾患、過労死の割合が、他産業より多くなっており、問題は深刻さを増しています。
この状況を改善するため、関係省庁や団体が取り組みを始めていますが、なかなか改善に結びつかない現状があるようです。

1-2.脳・心疾患で労災認定が最も多い職種は「運輸関係」

ドライバーの長時間労働が問題視される理由のひとつに、ドライバーの「健康問題」があります。
長距離・短距離を問わず、ドライバーは拘束時間の長さ・不規則勤務になりやすい職業です。睡眠時間を含めた十分な休息が取りにくい環境の中で業務を続け、健康上の問題を抱えたり、過労死したりする事態が起きています。
厚生労働省が発表した「平成30年版過労死等防止対策白書」によると、脳・心疾患(脳出血、心臓マヒなど)で労災申請・認定件数が最も多い職種は「運輸関連」です。


画像:厚生労働省「平成30年版過労死等防止対策白書」

この調査結果から、ドライバーが過酷な状況下で業務を行なっている現状が読み取れます。

ドライバーの命と健康を守るためには、

・脳・心臓疾患を減らす仕組みづくり
・十分な睡眠時間の確保
・週休二日の実現
・月間残業時間の削減
・健康診断、健康管理強化の実施(健康診断、血圧測定などの実施、睡眠時間等の記録義務付けなど)

これらを実施し、健康を害することがないよう最新の注意を払う必要があります。
また、過労死の労災認定基準は「月間100時間」です。時間外労働を段階的に減らす・所定の休日を設ける・睡眠時間の確保・可能な限り規則的な運行を実施することが、ドライバーの過労死を少しでも減らすことにつながるのではないでしょうか。

1-3.荷主第一・長い手待ち時間・賃金未払い…長時間労働に複数の要因

全日本トラック協会「トラック事業者のための労働法のポイント」にも書かれていますが、

・4時間走行したら30分以上運転しない時間を設けなければならない
・拘束時間は原則1日13時間以内。最大16時間以内。週15時間を超えてもよいのは週2回まで。
・1か月の拘束時間は293時間以内
・勤務と次の勤務との間は「原則連続8時間以上の休息を取らねばならない」(インターバル)

と定められています。
これらに違反した場合、指導・勧告を行うとしていますが、ドライバーの長時間労働が改善されたとはいいにくい状態です。
過去にもCariotブログでもお伝えしましたが、トラック業者が受けた監督・指導件数は約19%も増加しています。

【過去記事】トラック業者への監督指導件数19%増! 進んでいますか?物流・旅客運送企業の「働き方改革」

労働環境の改善が進みにくい原因はひとつではなく、自社努力だけでは解決できない部分も含まれています。その中で、特に指摘されている点があります。

<荷主第一主義>
荷物を運ぶドライバーは、業務を受ける側です。発注側企業と対等な立場で意見をいいにくいことは想像にかたくありません。荷主の要求・要望に応えるために無理な操業を行い、その結果、ドライバーの負担が大きくなっている現状があります。

<手待ち時間の長さ>
目的地まで荷物を運んでも、荷下ろしをするまでの待機時間があります。手待ち時間のある運行の平均拘束時間は13:27時間、ない場合の11:34時間と比べ、拘束時間が長引いていることが分かります。荷主・荷受け側の双方で情報を共有することで、待ち時間を大幅に短縮することが可能になります。



画像:全日本トラック協会「トラック輸送状況の実態調査」より

その他にも、17年、国土交通省は「待機時間料」を規定しましたが、きちんと支払われない・時間短縮の改善もされない状態であると指摘しています。また、割増賃金未払い(残業代)問題、荷待ち時間を休憩・休息とみなした違反もあります。
ドライバーへの大きな負担を軽減するためには、拘束時間だけではなく、休息時間・運転時間・連続運転時間などを正しく取得し、管理する必要があります。
しかし、ドライバーごとにデータを取得するために、アナログ方式では管理者の管理工数が増え、手が回らなくなることも予想されます。管理者の負担を増やさない方法でデータを取得できるようなシステムを導入するのもひとつの方法です。

2. ドライバーの負担軽減が急務!自社対応だけでは限界も

2-1.長時間労働を改善するための国の取り組み

厚生労働省には、「労働政策審議会 労働条件分科会」(会長・荒木尚志東京大大学院教授)があり、労働者の現状と課題の分析から提案までを行なっています。
それらを踏まえ、分科会の下に新たに「自動車運転者労働時間等専門委員会(仮称)」を立ち上げ、トラック・バス・タクシーの各ドライバーの労働時間(拘束時間)・休息期間・連続運転時間などの改善基準告示の見直しを行うことになりました。
19年11月29日付の物流ニッポンによると、喫緊の課題となっているドライバーの長時間労働に関する是正は、違反率が18年で60%と高い水準にあるとしています。
「働き方改革関連法案」の付帯決議で、改善基準公告の見直しについて付帯決議がなされていることもあり、同委員会では新たな改善基準告示を作成し、同法が施行される24年4月から前倒しして施行するべきとの意見も出ています。

なぜ、ドライバーの労働時間は他業種より長くなっているのでしょうか。それは、人手不足以外だけでなく、複数の原因が重なり合って起きていました。

2-2.自社の対応だけでは減らせないドライバーへの負担

「働き方改革関連法」が施行されたことで、長時間労働を前提とした企業体質・職場慣行を見直す企業が増えています。しかし、それぞれの企業内だけでは解決が難しい問題・課題もあります。
物流業界では、商慣行など一企業だけでは解決が難しい課題があり、その点が改革の阻害要因と指摘する声もあります。例えば「顧客(荷主)から短期で納入するよう要求される」「手待ち時間が長い」といった問題は残ったままです。

政府広報オンラインに寄せられた声を見ると、

・受注量が急増しても納期の変更がなく、残業等のしわ寄せが発生
・繁忙期対応で短期間に業務が集中。業務量の平準化が必要
・納期対応で現場の負担が増加。
・費用負担を押し付けられる。在庫を抱えてしまうとき、自社で倉庫を借りるなど在庫負担をせざるを得なくなる

という事例が紹介されています。
19年4月1日から「労働時間等設定改善法」(中小企業は20年4月から適用)が施行されています。他企業と取引をする際、長時間労働につながる短納期発注・発注内容の頻繁な変更を行わないよう配慮が必要になりました。
取引適正化のためには、荷主・荷受け企業の双方で確認事項を書面にすることも必要になってきます。
一例を挙げると、

・週末発注・週初納入、終業後発注・翌朝納入等の短納期発注を抑制し、納期の適正化を図る
・発注内容の頻繁な変更の抑制
・発注の平準化、発注内容の明確化、その他の発注方法の改善を図る

書面化することですべての問題が一気に解決するわけではありませんが、少なくとも口約束だけでなく書面にすることで、何かあった際に確認できる仕組みはつくることができます。
安心して業務を行うために、これまで「書面化」をしていなかった企業も、これを機に取り組んでみてはいかがでしょうか。

2-3.アナログからデジタルへ 「見える化」で問題点を抽出

「働き方関連法」が施行され、19年3月、関連各省庁が連携し「ホワイト物流推進運動」がスタートしました。誰もが働きやすい物流業界を目指す動きが加速する中、長時間労働を前提とした企業体質・職場慣行を見直す企業が増加しています。
誰もが働きやすい職場環境を実現するためには何が必要なのでしょうか。

<法律面からの取り組み>
・勤務間インターバル制度の導入
・年間所定労働時間の短縮
・休日労働の抑制
・36協定の適正化
・時間労働是正に向けた労使の話し合い
・賃金未払い、過労死、パワハラ・セクハラ・嫌がらせ等の差別行為、長時間労働など労働時間、自殺の防止

<社内で対応可能な項目>
・ドライバーの処遇改善:賃金・給与体系の見直し、年次有給休暇取得促進
・経営基盤の強化
・コンプラインス経営の強化
・多様な人材の確保・育成:女性・高齢者も働きやすい職場づくり、働きがいのある職場・会社づくり、若年労働力確保に向けた取り組みの強化

<外部との連携が必要な項目>
・長時間労働の是正:荷待ち時間・荷役時間の削減、高速道路の有効活用、市街地での納品業務の時間短縮、中継輸送の拡大
・取引の適正化:契約の書面化、荷待ち時間の記録、新標準運送約款に基づいた料金体系、適正運賃・料金の収受
・共同輸送・配送の検討・実施

物流業界は、慢性的な人手不足が続いています。その中で今いるドライバーの労働時間を短縮すれば、これまで以上に現場が回らないと考える方もいるかもしれませんが、「労働生産性の向上」を目標に改善点を洗い出し、無駄を省いて効率化を進めることで対応可能な部分が見えてくることもあります。その際、アナログ管理からデジタル管理にすることで、これまで見えなかった部分を「見える化」でき、業務改善の問題点や課題を抽出しやすくなります。

改善項目には、労働時間、適正運賃・給与体系などいくつもの項目がありますが、働きやすい環境整備をすることで多様な人材を確保できるようになり、人手不足による過重労働解消につながることが期待されます。

【参考資料】トラック運送業者の働き方改革実現に向けたアクションプラン

3.法律・罰則だけでは難しい⁈工数を増やさず細やかな管理をする方法

3-1.よりよい環境づくりの取り組みは始まったばかり

ドライバーの過重労働・健康管理に対して、いくつもの法律や規制がつくられていますが、改善に向けた取り組みは始まったばかりです。
19年7月1日からは「改正貨物自動車運送事業法」が施行され、荷主の配慮義務が新設されました。また、違反原因行為をしている疑いのある荷主には、国土交通大臣が必要に応じて「要請」「勧告・公表」を行うことになりました。独占禁止法違反の疑いがある場合は、公正取引委員会への通知も行われます。

次々と規制・罰則が設けられ厳しさを増しているように感じられることもありますが、ドライバーの人材不足と高齢化が進み、インフラを担う物流が停滞することも予想される中、環境の改善は急務です。
ただ、「労働環境の改善」といっても、どこから手をつければよいか分からないこともあるかもしれません。
厚生労働省は「取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン」を公表しています。


画像:厚生労働省「取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン」

まずはこれらを参照し、改善に必要な項目の洗い出しを行い、問題解決の最優先事項から着手し、ひとつずつ解消していくと大きな負担を感じず業務改善を行うことができます。

3-2.業務の手間を増やさず細やかな管理を実現

自社内だけでの対応が難しい場合は、システムをIT化し「見える化」することで、手書きなどのアナログ管理をしていた日常業務の負担を軽減できることもあります。
Cariotでは、動態管理だけでなく、ドライバーごとに詳細なデータをダッシュボード化し、デジタル管理が可能になります。それだけでなく、日々の業務や健康管理にも役立つ機能もご用意しています。
例えば、各ドライバーがどの程度の休憩時間を取得し、どのくらいの待機時間があるのかなど、これまでは把握が難しかった現場の動きを細やかに管理できるようになります。
詳しい機能については、よろしければCariotの機能を紹介している過去記事も、あわせてご覧ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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