トラック業者への監督指導件数19%増! 進んでいますか?物流・旅客運送企業の「働き方改革」

2019.09.09管理者必読の法律情報
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こんにちは、Cariot(キャリオット)編集部です。

今年4月に施行された「働き方改革」。国を挙げての取り組みとあって、さまざまな企業の施策や事例などがメディアでも次々と紹介されていますね。
そんな中、トラックやバス、タクシーといった各運送業界において、2018年に労働時間などの問題で労働基準監督署の監督を受けた事業所数はいずれも前年より増加し、話題になっています。
そこで今回は、物流・旅客運送企業の「働き方改革」において把握しておきたい各種法令や監督指導の内容から事例紹介、実現のためのポイントまでをご紹介します。

【目次】
1.運送企業における「働き方改革」の背後にある各種法令、監督指導とは?
 1-1.労働条件・基準を定めた労働基準法をはじめとする「労働基準関係法令」
 1-2.ドライバーの安全運転を確保するために定めた「改善基準告示」
 1-3.労働基準監督署による監督指導とは

2.トラック、バス、タクシー…。各業界の“ホワイト”度合いは?
 2-1.監督実施数最多の業種はトラック、昨年比18.9%増の5,109事業所!
 2-2. 労働基準関係法令違反では“労働時間” 関連が最多で5割超
 2-3. 改善基準告示違反は “拘束時間”、“休息期間”関連が上位に

3.監督指導でどう改善した?業種別事例紹介
 3-1.<トラック>1日の拘束時間が最長16時間超!ドライバーの時間外労働の実態がある運送会社への監督指導
 3-2.<バス>1日平均9時間超の長時間労働や休息時間不足が発生していたバス会社への監督指導
 3-3.<タクシー>累進歩合制導入、最低賃金法違反のタクシー会社への監督指導

4.業務の可視化から見えてくる「働き方改革」の実現

1.運送企業における「働き方改革」の背後にある各種法令、監督指導とは?

4月1日施行「働き方改革関連法」がもたらす“車両運転業務”のブログ記事でもお伝えしましたように、時間外労働の罰則付き上限規制をはじめとする「働き方改革」により、各企業社員の労働環境改善に向けた取り組みを開始しています。
トラックをはじめとする“車両運転業務”に関しては、企業規模にかかわらず2024年3月末まで時間外労働の罰則付き上限規制の適用が猶予されることになっていますが、すでに対応を開始されている企業様もいらっしゃるのではないでしょうか。

1-1.労働条件・基準を定めた労働基準法をはじめとする「労働基準関係法令」

労働基準法、最低賃金法などの労働基準関係法令は、労働条件の最低条件を定めたものであり、事業の種類を問わず、基本的にはすべての労働者に適用されます。
例えば労働基準法の中には、「労働契約と解雇・退職」「賃金」「労働時間・休憩・休日及び年次有給休暇」「年少者・女性の労働基準」といった労働に関するさまざまな基準が細かく定められています。

上記に定められた条件に違反した場合、事業主など「労働基準法上の使用者」は労働基準監督署の指導または罰則を受けることになります。

罰則内容は違反事項によって異なりますが、主に与えられるものは下記の通りです。

◆労働基準法違反時の主な罰則内容
・1年以上10年未満の懲役または20万円以上300万円以下の罰金
・1年以下の懲役または50万円以下の罰金
・6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
・30万円以下の罰金

「懲役」:労働基準法違反を犯し、有罪判決が下されると刑務所に拘置されてしまう刑罰です
「罰金」:刑務所に拘置されてしまう刑罰です違反した罰則として「定められた罰金」を支払う義務が発生します。

 

1-2.ドライバーの安全運転を確保するために定めた「改善基準告示」

トラック・バス・タクシーといった車両のドライバーはプロとして一般運転者の模範となる運転を行わなくてはなりません。
運転者の安全運転を確保し、労働時間等の労働条件改善を目的に設定されたものが「改善基準告示」です。
その中でトラック・バス・タクシーの業種毎に「拘束時間」「休息期間」「運転時間」「時間外や休日労働」の項目に基準を定めています。

もともと1989年2月に労働大臣が告示、これまで2回改正されてきましたが97年1月にさらに一部改正され、現行基準は97年4月1日から適用されています。

それぞれの改善基準の詳細については、以下をご参照ください。
厚生労働省 自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)について

1-3.労働基準監督署による監督指導とは

上記の通り、労働者の労働条件や安全衛生の基準は「労働基準関係法」に、さらにトラック・バス・タクシーなどのドライバーの労働条件については「改善基準告示」に定められています。それらを事業主が遵守し適正な労働条件の定着を図れるよう、労働基準監督署の労働基準監督官により日々必要な指導が行われており、このことを「監督指導」といいます。

監督官は、定期的または働く人からの情報を元に事業所に立ち入るなどし、機械・設備や帳簿などを検査、労働条件について調査を行います。
法令違反が認められた場合には、事業主などに対し是正を指導するほか、重大・悪質な事案の場合には、行政処分を行うこともあります。

このように監督指導は企業が上記労働基準関係法令の理解を深め、適正な労働条件の定着を図ることできるよう行なわれており、是正が確認できれば完了となります。

出典:厚生労働省 HP掲載資料より

 

2.トラック、バス、タクシー…。各業界の“ホワイト”度合いは?

さて、物流やバス・タクシー関連の企業様においては、上記をはじめとする労働関連の法令遵守について日頃から留意しているという方も多いかと思います。
では実際に全体を見てみた場合、監督指導実施状況や違反内容などの推移はどのようになっているのでしょうか?

2-1.監督実施数最多の業種はトラック、昨年比18.9%増の5,109事業所!

ここでは業種ごとの「監督実施」、「労働基準関係法令違反」、「改善基準告示違反」、それぞれにおけるここ3年の該当事業所数推移を見てみましょう。

◆平成28年から平成30年までの3年間における業種ごとの監督実施事業場数、労働基準関係法令違反の事業場数及び改善基準告示違反の事業場数

厚生労働省がまとめた「2018年自動車運転者を使用する事業場に対する監督指導、送検等の状況」によると、監督実施事業所数が毎年一番多く、右肩上がりに増えているのがトラック運送の事業所です。2018年は前年比18.9%増の5,109事業所で、全体の8割近くを占めています。
また、同様にハイヤー・タクシーは18.1%増、バスは26.8%増といずれも前年より監督指導が増加していることがわかります。

2-2.労働基準関係法令違反では“労働時間” 関連が最多で5割超

◆業種ごとの監督実施事業場数、労働基準関係法令違反の事業場数及び主な違反事項

次に、2018年「労働基準関係法令違反」における業種別の違反内訳を見てみます。
監督実施数が5,109件と最も多いトラック運送の事業所において、労働基準関係法令に違反していたのは、4,271事業所で、実に83.6%にのぼります。違反内容としては、どの業種でも「労働時間」が最多で、トラックにおいては3,013件で全体の約6割、次いで割増運賃が約2割の状況となっているのがわかります。

2-3.改善基準告示違反は “拘束時間”、“休息期間”関連が上位に

◆業種ごとの改善基準告示違反事業場数及び主な違反事項

同様に「改善基準告示違反」における業種別の違反内訳を見てみると、こちらも最も件数が多い業種はトラック運送で、改善基準告示に違反していたのは3,419事業所。トラックの監督実施事業所5,109事業のうち約67%が違反となっています。

違反事項の詳細としては、どの業種でも「最大拘束時間」がトップで、トラックにおいては51.2%と半数を占めています。次いで、「総拘束時間」(43.4%)、休息期間(37.4%)、連続運転時間(29.7%)と続いています。

 

3.監督指導でどう改善した?業種別事例紹介

さて、上記の通り監督指導により年間5,000を超える事業所の法令違反が判明しています。それでは、具体的にはどのようなケースが見受けられるでしょうか?以下にトラック、バス、タクシー各業種においての監督指導の事例をご紹介します。

3-1.<トラック>1日の拘束時間が最長16時間超!ドライバーの時間外労働の実態がある運送会社への監督指導

◆指導に至る背景
ルート配送などを行うある運送会社では、人手不足などによりドライバーの負担が多くなり、ドライバー1人の拘束時間が1日最長16時間を超え、1ヶ月の総拘束時間が最長315時間となっていました。1ヶ月120時間を超える時間外労働が発生していたことも判明。

いずれも、トラックドライバーにかかる改善基準告示(1か月の総拘束時間:原則293時間以内、1日の最大拘束時間:基本13時間以内)を大幅に超えている状態です。
さらに、健康診断の結果、異常の所見があると診断されたドライバーについて、企業側は医師の意見を聴くなど必要な措置をとっていませんでした。

◆指導内容
以下法令に基づき、拘束時間の是正や時間外労働・長時間労働の削減、健康診断で異常所見の認められた社員に対して医師の意見を聴取するよう是正指導を行いました。

・労働基準法第32条違反(労働時間)、長時間労働の削減
・改善基準告示違反(最大拘束時間及び総拘束時間)
・労働安全衛生法第66条の4違反 (健康診断の結果についての医師からの意見聴取)

◆企業側の改善対応
まずは企業が現在の業務量や配送ルート、ドライバーの時間外労働などを適切に把握することに着手しました。
その上で各ドライバーの拘束時間短縮のため荷主と交渉し、配送ルートを見直しすることに。また、時間外労働が月80時間を超えそうな場合にはドライバー交代をするなど勤務体制の変更も行うことで、拘束時間超過のドライバーが発生しないようになりました。
これらの対応により、時間外労働は36協定の限度時間以内かつ80時間以内、1日の拘束時間が16時間以下、1ヶ月の総拘束時間が293時間といずれも改善されています。

3-2.<バス>1日平均9時間超の長時間労働や休息時間不足が発生していたバス会社への監督指導

◆指導に至る背景
バス運転者にかかる改善基準告示では、1日の最大拘束時間は13時間が基本、4週間を平均した1週間当たりの拘束時間は原則65時間以内とされています。しかしながらこのバス会社では1日の拘束時間が18時間程度、4週間を平均した1週間当たりの拘束時間が70時間に達しているドライバーも発生していました。また、休息期間が7時間程度と規定の8時間に満たないケースも判明。
これら長時間労働などにより、精神障害を発症したとするドライバーからの労災請求をきっかけに、監督指導が行われることになりました。

◆指導内容
以下法令に基づき、拘束時間の是正や時間外労働・長時間労働の削減、休息期間の確保、最大運転時間の是正指導を行いました。

・労働基準法第32条違反(労働時間)、長時間労働の削減
・改善基準告示違反改善基準告示違反 (最大拘束時間、総拘束時間、休息期間、最大運転間)

◆企業側の改善対応
1人当たりの労働時間削減のため、ドライバーを新規雇用し増員を行いました。同時に運行路線の見直しも行うことで、時間外労働が36協定の限度時間以内かつ80時間以内、1日の拘束時間が16時間以内、4週間を平均した1週間の拘束時間も65時間以内に収まるようになりました。
さらに、これを機に管理者が常に改善基準告示を意識し、ドライバーの日々の拘束時間や運転時間を適正に把握し柔軟に配車を行えるような体制を整えたことで、休息時間や最大運転時間が規定範囲を超えることがなくなるという成果も出ています。

3-3.<タクシー>累進歩合制導入、最低賃金法違反のタクシー会社への監督指導

◆指導に至る背景
あるタクシー会社ではタクシードライバーの給与に、累進歩合制度(※)を導入しています。
この運賃収入に応じ段階的に支給割合が上がる制度においては、歩合給の額が低いドライバーの場合、地域別最低賃金以上の給与が支払われないという実態が起きていました。

◆指導内容
以下法令になどに基づき、累進歩合制の廃止など賃金制度の見直しにより、給与が最低賃金額を下回らないよう是正指導を行いました。

・最低賃金法第4条(最低賃金額以上の支払)

◆企業側の改善対応
企業側では、現状の給与体制や支払い状況を再確認した上で労働者側と協議を行いました。結果ドライバーの給与について累進歩合制度を廃止し、新たな賃金制度を導入することに。
さらに今までに不払いとなっていた最低賃金額との差額をドライバーに支払い、今後は最低賃金を下回ることがないよう新制度での運用を開始しています。

※累進歩合制度について
累進歩合制度とは、運賃収入等に応じて歩合給が定められている場合に、その歩合給の額が非連続的に増減する給与制度です。累進歩合制度は、ドライバーの長時間労働やスピード違反、ひいては交通事故を誘発するおそれがあることから、採用することは望ましくないとされており、労働基準局長通達に基づき廃止が指導されています。

 

4.業務の可視化から見えてくる「働き方改革」の実現

上記のとおり、業種・企業によって法令違反の詳細は異なるものの、いずれも監督指導により改善に至っていることがわかりました。
改善策の検討、実行にあたっては、いずれも業務内容や業務量、ドライバーの負担や労働実態などを企業側が把握することに着手している点が共通しています。
今、どのような点が問題となっており、どこを改善すればよいのか? 現状、一連の“働き方”に関する課題をお持ちの企業様においては、まずは業務の可視化を行っていただくことをおすすめいたします。
それらを正確に認識することが、ドライバーをはじめとする社員の労働環境改善に至り、法令遵守そして「働き方改革」のスピーディな実現へと繋がっていくのではないでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございます。
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